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糖尿病Q&Aを読む
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脳梗塞や心筋梗塞は、ガンと併せると日本人の3大死因ですが、なぜ糖尿病の3大合併症(網膜症・神経障害・腎障害)には入らないのですか?
もちろん糖尿病は動脈硬化を進めますので、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクを高めます。ただ動脈硬化を進める要因は糖尿病だけではないのです。
糖尿病以外に高血圧・高脂血症・高尿酸血症・肥満・タバコなどがあります。
合併症の予防が糖尿病治療の目的なのですから、糖尿病以外の危険な要因もきちんと治療したいものですね。
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糖尿病の治療薬にはどんなものがありますか?
古くからある薬は、膵臓を刺激してインスリンを放出させる薬です。それ以外にインスリンの働きを良くする薬や、食べ物の消化を遅らせて食後の血糖値をなだらかにする薬などがあります。
患者さんがどの薬を飲むかは(もちろん食事療法や運動療法だけで血糖値が良好にコントロールされれば薬を飲む必要は全くありませんが)、その患者さんのこれまでの血糖コントロールの状況、合併症の有無やその程度、生活習慣や肥満の有無など、いろいろな事を考慮して決定します。もし膵臓をいくら刺激してもインスリンが出ない場合は、インスリン注射も考えねばなりません。
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飲み薬が始まれば、食事療法は中止してもいいのですか?
血液中のブドウ糖は、インスリンの働きでエネルギーや脂肪になります(前述)。
もし患者さんが食べ過ぎた場合も、余分に摂ってしまったブドウ糖は、インスリンの量や働きが足りなければそのまま高血糖として血液中に残りますが、インスリンの量や働きを高める薬の安易な開始あるいは増量により、血液中で減少した分が脂肪合成にも使われてしまいます。このようなケースでは、血糖値はたとえ正常化しても体重が増加する、という事になります。
肥満はそれ自体動脈硬化の危険因子ですし、また肥満になることでインスリンの働きも悪くなる事が知られています。血糖値のみを気にしている時の落とし穴がここにあります。合併症を防ぐために病院にかかっていたはずが、気がつくとわざわざお金をかけて薬も飲んで、みずから合併症を招きやすい体を作っていたわけですから。
また、必要以上のカロリーを摂った為にインスリンの必要量も増し、膵臓を刺激する薬の量がどんどん増えてしまい(途中で体重を計っていればこの事態は避けられたはずですが)、しまいには膵臓が疲弊してしまってインスリン注射を余儀なくされた方も少なくありません。本末転倒とは、まさにこういった事を言うのではないでしょうか。
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糖尿病の人が体重が減るのは良い事ですか?
糖尿病というと一般に肥満者のイメージがあるのですが(実際成人型の糖尿病は肥満タイプが多いのですが)、インスリンが出ない小児の糖尿病や、成人でも膵臓が疲弊した場合、また著しい高血糖状態では(下記)、インスリンの欠乏の為脂肪や蛋白が分解し、みるみる体重が減ってきます。
この時脂肪が分解する事によってケトン体という物質が血液中に増加し、血液が酸性になり昏睡状態になる事もあります(放っておけば命にもかかわります)。肥満者がダイエットや運動ででゆっくり痩せるのはもちろん良い事ですが、体重減少は時には危険信号でもあるのです。
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血糖値が下がれば合併症も改善しますか?
網膜症の初期のものは後戻りが可能なこともありますが、進行したものに対してはレーザー治療などを行う事があります。また急激な血糖コントロールにより眼底所見がかえって悪化する事もありますので、定期的な眼のチェックが不可欠です。(当院隣の用賀眼科では、白内障の日帰り手術も行っています。)
腎臓障害も極早期のものは可逆的ですが、ある程度進行したものに対しては食事の蛋白質を制限したり、ある種の降圧剤や血液を固まりにくくする薬を飲んだりします。
神経障害については血糖値に平行して必ずしも手足の痛みやしびれが改善するとは限りませんが、長い目で見て進行を防止するためには、やはり血糖のコントロールが重要です。神経の周りについた糖分を除去する薬や、ビタミン剤、血管拡張薬、麻酔作用を持つ不整脈の薬等も併用します。
また糖尿病性のインポテンスに対しても、バイアグラは有効です。生活の質が高まったと、多くの患者さんに喜んでいただいております。 -
一度インスリン注射を開始したら、もう一生涯インスリンを射ち続けなくてはならないのですか?
著しい高血糖状態では、インスリンの分泌や働きがさらに低下し(糖毒性)、さらに血糖値が上昇する、といった悪循環が存在します。
この様な悪循環を断ち切り、疲れた膵臓を休ませてあげる為に一時的にインスリン注射を行うと、退院時にはインスリンどころか内服薬さえも必要でなくなるケースもあります。(もちろんこの場合糖尿病が治ったわけではなく、食事療法という治療で最終的にはコントロール出来たという事です。)
ただし、長い間に膵機能が徐々に衰退した末インスリン注射が必要になった場合は、生涯注射を行う覚悟が必要です。 -
尿糖が陽性といわれたら、糖尿病なのでしょうか?
血糖値が170mg/dl位になると尿に糖が出て来ます。
ですから、もし早朝空腹時に尿糖が陽性なら、早朝空腹時の正常血糖値は110mg/dl以下です(糖尿病診断基準としては、空腹時血糖126mg/dl以上となっています)から、これは明らかに異常です。
しかし食後ならば、必ずしも異常とは限りません。また尿糖が出現する血糖値には個人差があり、140〜150mg/dl以下でも尿糖が出てしまう人もいます(腎性糖尿)。
いずれにせよ尿糖は、糖尿病発見のきっかけだったり、コントロールのひとつの目安にすぎず、糖尿病の診断はあくまでも血糖値でなされます。 -
高血糖の時は尿がたくさん出て忙しいので、喉が乾いても飲水を控えた方が良いのでしょうか?
高血糖状態では尿糖排泄も増加するため、腎臓では浸透圧の働きで血液から尿の方に水分が移動します(すなわち多尿となります)。そのため体の血管内は脱水気味となり、血液も濃縮され、さらに血糖値が上昇します。
ですから喉が乾くのは当然の事で、この(体がむしろ脱水状態だと言う)危険信号を無視して水を飲まないでいると血糖値は著しく上昇し、600mg/dl以上にもなると昏睡から死に至る事さえあります。
糖尿病の人にとっては、(水を)飲むから(尿が)出るのではなく、出るから飲まなくてはならないのです。"はじめに多尿ありき"です。この状態から脱却するには、血糖値を下げるしかありません。
注:もちろん水の飲みすぎも体によくありません。特に心臓や腎臓、肝臓が悪くて体がむくんでいるような方は、塩分制限を行った上で必用最小限の飲水をして下さい。 -
病院で栄養士として働いています。毎月糖尿病教室があるのですが、患者さんに砂糖は何故いけないのかと聞かれ、すぐ答える事が出来ませんでした。
糖尿病患者さんの為の食品交換表では、調味料の1日使用量は0.6単位(48キロカロリー)で、これは砂糖6g(0.3単位)と味噌汁1わん分の味噌12g(0.3単位)を合計した単位に相当します。
砂糖を全く摂れない訳ではありませんが、かなり制限されている事がわかります。
その理由は砂糖(=ショ糖)などのニ糖類(もっとも吸収されやすいブドウ糖や果糖などの単糖類が二個結合したもの。ちなみにショ糖はブドウ糖が2個くっついたもの)や果物(食品交換表の表2)に含まれる果糖などは、デンプンなどの複合糖質(表1)に比べ同じカロリーでも消化吸収がとても早いので、インスリン不足の糖尿病患者さんでは急激に血液中に増加したブドウ糖を処理し切れません。血糖値が一気に上がってしまい、また一度上がった血糖値はなかなか元に戻りません。血液中の中性脂肪も増加します。膵臓の負担を減らす為にも、食後の血糖値のピークはなるべく低くなだらかにすることが重要です。
”早食いをせずよく噛んでゆっくり食べること”や”まとめ食いをせず1日に3回以上に分けて食べること”が大切な理由もここにあります。 -
会社の健康診断で尿糖が陽性でした。血液検査の結果はまだですが、血糖値が正常でも、再度検査は受けた方がよいのでしょうか?
血糖値は一般には食事に伴って上昇し、山型のグラフとなりますが、空腹時血糖が正常でもピーク時に200mg/dlを超えたりする場合もありますので、本当に糖尿病かどうかを調べるには、ブドウ糖負荷試験と言うのを行います。
これは75gのブドウ糖溶液を飲んで、飲む前、30分、60分、90分、120分後の血糖値やインスリン値、尿糖値などを測る検査ですが、実際には半日がかりとなってしまいます。
そこで最近はグリコヘモグロビンA1cという血液の指標を良く用いるようになりました。この検査は過去1〜2ヶ月の血糖の平均の値(数学的には積分値)を表すもので、正常値は5.8%以下です。
糖尿病患者さんの中には普段食事療法を守らないで、検査の2〜3日前だけ少なめに食べて来る、といったズルをされる方が時々おられますが、絶食後の血糖値はたとえ正常でも、このヘモグロビンA1cの値でばれてしまいます。ヘモグロビンA1cは新しい糖尿病診断基準にも補助的に用いられるようになりましたし、また近頃住民検診などでもよく測るようになりました。
結論的にはあなたの場合、空腹時(?)血糖値が正常であっても、ヘモグロビンA1c位は測っておいた方が良いでしょう。(ただしブドウ糖負荷試験に比べ、糖尿病軽症例では見逃しもあり得ます。)
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尿糖が出るのは、糖尿病か腎性糖尿のどちらかが原因ということなのでしょうか。ストレスや体調不良で、糖が出るということはないのですか?
ストレスや体調不良で尿糖が出る場合、以下の二つの状況が考えられます。
@血糖を上昇させるホルモン(副腎という臓器から出るステロイドホルモンやカテコラミンと言うホルモン、脳下垂体から出る成長ホルモンなど)の増加により、血糖値が上昇し、その結果尿糖が出る場合。
A血糖値は正常だが、ストレスや運動により尿糖排泄閾値(この値を超えると尿糖が出ますよ、という敷居の血糖値)が下がる事により尿糖が出てしまう場合。
@の場合は血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの分泌や働きがしっかり保たれていれば、もし仮に血糖上昇ホルモンの増加があったとしてもインスリンも増加し,血糖値は正常に保たれるはずですので、高血糖が続くならばやはり耐糖能障害(糖尿病もしくは糖尿病予備軍)が有ると考えるべきでしょう。
Aの場合は全く可能性がないとは言えませんが(尿蛋白などは体調不良時に出てしまう事が良くありますが)、こう言ったケースの実際の報告はあまり無く、もしそうであっても(一過性腎性糖尿であっても)糖尿病でなければあまり心配は要りません。
糖尿病の診断はあくまでも血糖値でなされます。なぜなら合併症の出現・進行と直接関係が証明されているのは、尿糖ではなく血糖値だからです。尿糖は糖尿病発見のための一つのきっかけに過ぎません。 -
勤務先の健康診断で尿糖がでました。現在の仕事は病院の給食室での食器洗浄で、もう3ヶ月ほどやっています。一日2時間の勤務ですが、すごくハードで汗だくだくのなかで、終わってから水をたくさんのみます。のどがかわくと糖尿病だと言われますが、再検査といわれるでしょうか?
まず少し難しいお話をしなくてはなりません。喉が乾くというのはどう言う事か、というお話です。
血液のナトリウム濃度(しょっぱさ)は常に一定に保たれており(なんと海水と同じ濃さなのです!やはり生命は海から生まれて進化したのでしょうか)、この値が高すぎたり低すぎたりすると浸透圧の働きで細胞の中に水が入ったり、細胞から水が出て干からびたりする(少しオーバーに話しています)結果、意識障害や痙攣が起こります。
それではまずいので、脳の中の視床下部と言うところに渇中枢と言うのがあって、もし血液が濃くなると(浸透圧が上がるとも言います。)まず脳下垂体より抗利尿ホルモンというものを分泌し、腎臓で一度血液をろ過して出来た原尿から、水分だけを再び血液側に取りこみます。(この働きを水分の再吸収と言います。血液をまず腎臓で薄めるわけですね。)
それでもまだ血液が濃すぎる時、そこで初めて喉の渇きを覚え、いよいよ水を飲むという行動に出るのです。
渇中枢では血液が濃いと言う事を、実際には血液のブドウ糖濃度(血糖値)ではなく、ナトリウム濃度で感知しています。また体の血管の何箇所かに圧受容体というものもあって、脱水などで体の循環血液量が減った時にも、やはり渇中枢が上記の指令を出します。
今回のケースでは、お仕事中多量に汗をかかれる事から、それだけでも脱水状態にある事が予想されます。またその時、体から失われるナトリウム量よりも失われる水分量の方が多いと血液のナトリウム濃度も上がってしまい、やはり喉が乾きます。
糖尿病患者さんでは、浸透圧利尿により(前記)脱水状態となった結果、喉が乾きます。もしあなたが糖尿病でなければ、同じ脱水でもそれは発汗の為で、この時むしろ尿量は減っているのではないでしょうか。(抗利尿ホルモンが働くので)
結論的には、糖尿病は喉の渇きの一つの原因であって、喉が乾く=糖尿病ではありません。(抗利尿ホルモンの分泌や腎臓での働きが悪い事による、尿崩症という病気もあります。)ただしあなたの場合は尿糖が出たので、再検査と言われると思います。
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父の糖尿病が発覚したのは9年ほど前になります。今現在、糖尿病による網膜症で左眼はほとんど見えず、身体障害者の申請を済ませ、両眼視野障害2級です。目に付いては大学病院で治療を続けているのですが、このところ足のむくみがひどくなってきました。腎臓に異常が出ているのでしょうか。
糖尿病発症後約10年が経っており(この間の血糖.血圧などのコントロールがどの程度だったかにもよりますが)、腎臓にも合併症が来ている可能性があります。
ただ、むくみの原因は腎臓ばかりではなく、心臓や肝臓、甲状腺疾患、栄養不良(悪性腫瘍など)のことも有ります。
また腎臓が原因でも、糖尿病からとは限りません。出来ましたら一度、診させていただけないでしょうか -
以前から月経不順のため婦人科に通っていたので、そこでブドウ糖負荷試験を受けました。空腹時は93で正常だったものの1時間後が200,2時間後も196と血糖値が下がらず、ほぼ糖尿病で間違いないのでは?ということでした。その後内科を紹介してもらったのですが、とりあえずヘモグロビンA1cの検査をして、結果によってどうするかを決めるとのことでした。
糖尿病の診断基準によりますと、随時血糖が(1日のうち、いつ抜き打ちで測っても、という意味)200以上の場合、糖尿病型と呼びます。(あなたの場合は1時間値が200でした。)
その場合再度糖負荷試験で糖尿病型を確認すれば、糖尿病と診断します。
ただ明らかな高血糖症状が有る場合(口渇、多飲、多尿、体重減少など)や、糖尿病網膜症が有る場合、グリコヘモグロビンA1cが6.5以上の場合などは、もう一度糖負荷試験をやらなくとも、糖尿病と診断します。その内科の先生は正しい対応をされていると思います。 -
(前と同じ方) 当面食事はそれほど気にしなくてもよいが、甘いものは控えることと言われました。次回の診察まで3週間以上あるのですが、それまでどんなことに注意して生活していたらよいのでしょうか?
まだ糖尿病と決まったわけでは有りませんが、境界型であっても、糖尿病に準じた健康食(糖尿病食というのは、実は糖尿病で無い人にも、すべての人に健康をもたらす理想的な食事なのです!)は開始しても構わないと思います。
もっとも慌てる必要はありません。主治医の言う様にまず甘い物(糖質)から控えてみたらどうでしょう。そして本屋さんで食品交換表というのを買って(大きな病院では売店でも買える事も有ります)、まずゆっくり読んでみて下さい。
量さえ気をつければ実は何でも食べられる、という事がおわかりいただけると思います。1日の総カロリーは一般的には標準体重(身長 m×身長 m×22)に30キロカロリーを掛けたものです。
しかし実際には、あなたが今後主婦となるのかお仕事をされるのか、もしお仕事をされるならどのようなお仕事か、また体重はどうか(肥満があるのか痩せているのか)、食生活はどうか(回数や時間、外食の有無など)、さらには患者さんのキャラクターまで考慮して食事療法の処方をお出しします。
ですからここから先は、やはり患者さんの主治医でなければコメントは出来ませんし、コメントしてもいけないと思います。 -
糖負荷試験で境界型と言われました。いずれ糖尿病になるのは確実なのでしょうか?
境界型の中には、”ストレスなどで正常型の範囲を一時的に逸脱した群”というのも含まれます。
ただし一般的には境界型は”糖尿病になる恐れが高い”と考えられており、特に糖負荷試験の2時間値が170〜199の人は糖尿病への移行率が高いとされています。
また、もし患者さんに肥満や内臓脂肪の蓄積がある場合は,動脈硬化発症の危険が高く、高血圧や高脂血症にも注意しながら、やはり糖尿病に準じた生活習慣の改善(タバコなども含めた)や、定期的な血糖チェックが必要になります。 -
糖尿病の可能性があるのですが、結婚前のため妊娠との兼ね合いもとても心配です。
確かに糖尿病合併妊娠は早・流産、胎児奇形、巨大児分娩などの頻度が高く、また母体も網膜症が悪化したりするため、妊娠前からの厳格な血糖コントロールが必要です。
もしあなたが糖尿病と言われ妊娠を希望される場合は、出来れば糖尿病と妊娠の専門チームをもつ施設で、計画妊娠をすべきでしょう。 -
まだ20才台で糖尿病といわれました。原因としてはどんなことが考えられるのでしょうか? ストレスだけでも発病するものなのですか? ちなみに両親は糖尿病ではありません。
成人に多い糖尿病は(2型糖尿病とも言います)遺伝的な体質に(一言でこう言っても実際にはインスリンの分泌から作用点まで、実にたくさんの原因があるのです。そしてその遺伝子的な異常も実際に解明されているのは、まだ極一部なのですが。)環境因子(過食、運動不足、ストレスなど)が加わって発症するとされています。
家族歴がはっきりしない場合は、小児に多い1型糖尿病(膵臓のβ細胞というインスリンを作る細胞が何らかの原因で破壊される為、インスリンの絶対的欠乏を起こします。肥満はありません。ただし緩徐に進行するものもあり、その場合は2型糖尿病と紛らわしいこともあります)や、膵臓の疾患、薬による(副腎皮質ホルモンなど)高血糖、他のホルモン(前述したカテコラミン、副腎皮質ホルモン、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなど)の過剰症による二次性糖尿病なども鑑別する必要があります。 -
健康診断で尿糖が3+でした。糖尿病になってしまったかと思うと、ショックでどうして良いか判りません。
もし糖尿病と診断されても、どうかあきらめて投げやりにならずに、きちんと治療をして下さい。きちんと治療すれば合併症にならずにすむどころか、普段から健康食を食べたり定期的に病院で健康管理をするわけですから、かえって他の病気を遠ざけたり、また他の病気を早期発見することもあるのです。(”一病息災”と言う言葉をご存知でしょうか。)
周囲の人には、やはり臆することなく、糖尿病である事を伝えるべきでしょう。さもないと、付き合いで飲食を強要されて、食事療法が出来なくなってしまう可能性があります。確かに糖尿病にまつわるイメージにはネガティブなものも多いのですが(食べ過ぎから来る病気など)、根気良く周囲に理解と協力を求めて行く必要があります。
もちろん糖尿病患者さんは一つのハンディを背負っておられるわけで、これから様々な制約もあり、またご苦労もされる事でしょう。でも糖尿病でない私に言われるのは心外かもしれませんが、たくさんの糖尿病患者さんが世界中で頑張っています。(子どもの時からインスリンを射ち続けている女性がこの前ミスアメリカになりました。)あなたがもし糖尿病であっても、どうか病気に負けないで下さい。
糖尿病は治ることはありませんが、コントロールすることは出来ます。近視も同じでメガネがないと見えなくて不便ですが、メガネをかければ普通と同じ生活が可能です。糖尿病の治療をどうぞメガネだと思って生活習慣にしてください。
甲状腺のQ&Aを読む
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甲状腺の病気と診断されたのですが、どのような症状が多いのでしょうか。私の症状は、味をあまり感じない、耳が遠い、香りもあまりない、頭がかなり重い、体が重い、こんな感じなのですが症状的にはあてはまるのでしょうか?
いきなり甲状腺と医者に言われても、一般の方には馴染みの無い臓器ですので、恐らく当惑された事と思います。ある程度お調べになったかもしれませんが、甲状腺は頚部にある(気管の前、喉仏の下)、蝶のような形をした、普通は柔らかい臓器です。ここでヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを作り、血液中に分泌しています。
甲状腺ホルモンは交感神経の働きを高めますので、このホルモンが多いと脈が速くなったり、手が震えたり、精神的にイライラしたりします。代謝も亢進しますので、食べる割に体重が減ったり、微熱があったり、暑さに弱く(汗もかきやすく)なったりします。ホルモン以外の一般検査データも代謝亢進を反映し、コレステロール値が下がったり、骨から出るアルカリフォスファターゼ(ALP)と言う値が上昇したり、また二次的に血糖値が上昇することもあります。便通は一般にゆるく、頻回になります。
有名なバセドー氏病も甲状腺機能亢進症を呈する病気の一つですが、この病気では甲状腺を刺激する物質が血液中にあって、(甲状腺ホルモンそのものではなく)その刺激物質が眼球突出を起こす事が知られています。また甲状腺の上司にあたる脳下垂体と言う場所から甲状腺刺激ホルモン(TSH)と言うのが分泌されているのですが、脳下垂体からTSHが多量に分泌されると(下垂体にTSHをたくさん作る腫瘍があったり、下垂体が部下である甲状腺の働きを正しく評価できないで甲状腺がサボっていると勘違いした場合など)やはり二次的に甲状腺機能亢進症となります。また甲状腺自体に急性、亜急性に炎症が起こった為に甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが一気に血液中に流れ出し、機能亢進症状を示す事もあります。(この場合甲状腺組織は破壊されているのでホルモン合成能は極度に落ちており、経過中にむしろ機能低下症になる事もあります。そのため真の意味での甲状腺機能亢進症とは呼びません。)
甲状腺ホルモンが足りないと、機能亢進症と反対の事が起こります。脈が遅くなる。体の動きや精神活動がスローになる、体重が増える、寒さに弱い、便秘になる、などです。また髪の毛が抜けたりもします。一般検査ではコレステロール値や、LDH・CPKなどと言う筋肉由来の酵素の値が上昇したりします。
甲状腺機能低下症の原因として最も多いのは慢性甲状腺炎(橋本病)という中年女性に多い一種の自己免疫疾患(本来自分の体を守るはずのリンパ球や抗体が、自分自身を攻撃してしまう病気)です。また甲状腺自体が正常でも、上司である下垂体が”働け”という命令(TSH)を出せなかったり(二次性甲状腺機能低下症)、せっかく命令を出してもその命令が邪魔されてうまく甲状腺に届かなかったりした場合も、やはり甲状腺機能は低下します。
甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症のどちらにも見られる症状には、全身倦怠感、女性ならば生理不順や無月経などがあります。
さて今回の場合ですが、体が重い、耳が遠いなどは、甲状腺機能低下症を思わせる症状です。ただ味覚や嗅覚に関しては甲状腺から来る症状としては私自身経験が無く、お調べした限りでは本に記載もありません。(文学的な表現ですが、”精神活動の低下に伴う感覚の鈍磨”と考えれば、甲状腺機能低下症に合致するかもしれませんが。)ただ頭痛などは下垂体腫瘍による症状のことも有りますので、出来れば大きな病院で、内分泌専門医の診察を受ける事をお勧めします。
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心電図から甲状腺異常は分かるのでしょうか?
心電図だけで甲状腺疾患を診断する事は出来ませんが、甲状腺疾患を疑う事は出来ます。
甲状腺機能亢進症では、洞性頻脈(普通の人でも運動したり興奮したりすると起こる頻脈で、心臓の自己ペースメーカーが早くなっている状態。脈拍数 100/分以上。一つ一つの波形は正常。)や心房細動(心房という心臓の上の部屋が小刻みに震えており、その心房のあちこちから出る電気信号が、時々心室という心臓の下の部屋へ伝わり、ポンプである心室の収縮をランダムに起こす)がよく認められます。
御老人などでは、甲状腺機能が亢進していても症状に乏しく、心房細動だけで甲状腺機能亢進症が発見されることもあります。
甲状腺機能低下症では、洞性徐脈(心臓の自己ペースメーカーが遅くなっている状態。脈拍数50/分以下)が一般的ですが、粘液水腫といって機能低下症がひどくなった状態では、心臓の周りに水がたまって心電図の波形も低電位になる(縦の幅が狭くなる)ことがあります。 -
私は6年前にバセドー病にかかり、「眼球突出は甲状腺全摘出をする事で治る患者がほとんどだから、あなたも全摘しなさい」と薦められ全摘出しました。それ以来ずっとチラージンを飲んでいますが、6年経った今も突眼は良くなったとは言えません。先生、本当に全摘をする事で突眼は治るものだったのでしょうか?それと、6年経った今治す方法は整形外科的な方法しかないのでしょうか?
約30年前にバセドー病眼症の治療法として甲状腺全摘後に高容量の放射性ヨードを追加した治療法が報告されました。その後わが国やスウェーデンなどでも甲状腺全摘術の効果はおおむね良好であるとの報告がありました。
ただ御存知かとは思いますが、バセドー病の眼球突出は甲状腺ホルモンの過剰の為ではないのです。その証拠に治療により甲状腺ホルモン値が正常化しても,眼症状はなかなか改善しません。初めから甲状腺機能は正常で、眼症状だけが存在する患者さんもいます。
眼球突出症の原因としては、眼球の後ろの組織(眼球を動かす筋肉など)に対する免疫反応が考えられています。また甲状腺刺激物質が球後組織にも影響していると思われ、これらの刺激物質を減らしたり、自己免疫反応を抑制する事が本来重要と考えられます。
しかしながら甲状腺全摘術のみで眼症状が改善した症例がある事は、甲状腺組織という抗原(免疫反応の対象、すなわち体の自衛隊が敵とみなして活動的になる相手)量の減少が、ある程度意味を持つのかもしれません。
手術以外の治療法としては、副腎皮質ホルモンの大量投与(ステロイドパルス療法)と球後組織へのX線照射を組み合わせたものや、血漿交換療法などがあります。他にステロイド以外の免疫抑制剤の投与やγグロブリン(Bリンパ球が作る抗体)大量投与なども一部試みられていますが、副作用、有効性、コストの面から一般的な治療とはなっていません。
ただし上記の内科的・放射線科的な治療に最も反応するのは眼球突出症の活動期の場合で、病状が進行し外眼筋の繊維化や癒着を来した症例では、手術(整形外科ではなく眼科の)が必要です。
あなたの場合発症から6年経っておりますので慢性期(瘢痕期)に入っている可能性もありますが、MRI(磁気による断層撮影)で眼症状の活動性を評価する試みが行われています。長崎大学第一内科の横山直方先生や、神戸の隈病院の玉井一先生に一度お尋ねになられたらいかがでしょう。
尚、喫煙がバセドー病眼症を悪化させるという報告がありますので、念の為申し添えておきます。
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今年の5月に甲状腺の検査をしました。血液検査では問題ないとのことですが,少し腫れているそうです。病名は?とお聞きすると,つけるとしたら慢性甲状腺炎とのことでした。症状は空咳と太りやすい、疲れやすいことです。仕事はかなりハードで、ストレスもありますしイライラもあります。生理は順調でよく言われる更年期症状も感じません。ちなみに3月に内科で調べた数字は TSH 5.1 T3 181 T4 9.4でした。その数字をみて県病院のドクターはこんな古い検査は今はしないと鼻で笑っていました。再検査の必要ははいかがでしょうか?完治はしないにしても今後どのような注意が必要でしょうか?よろしくお願いします。
甲状腺ホルモンにはT4(サイロキシン)とT3(トリヨードサイロニン)があります。
4とか3とか言うのはヨウ素の数で、甲状腺から主に産生・分泌されるのは1分子に4つのヨウ素を持つT4ですが、肝臓などの末梢組織でヨウ素が一つ取れるとT3になります。T4やT3は血液中ではそのほとんどが蛋白と結合しており、実際にホルモン作用を発揮するのは、蛋白と結合していない遊離 T3(freeT3)と遊離T4(freeT4)です。(特に遊離T3にホルモン作用があります。)
甲状腺ホルモンと脳下垂体から分泌されるTSH(甲状腺刺激ホルモン)の間には、甲状腺ホルモンの値が大きく狂わない様(体の恒常性を保つ様)、フィードバック機構というものが存在します。
典型的な甲状腺機能低下症(TSHを分泌する下垂体などに異常が無く、甲状腺だけが悪い)の場合、甲状腺ホルモンは減少する為、甲状腺の上司である下垂体はTSHを増やして、サボっている部下を鞭打ちます。すなわち甲状腺ホルモン低値・TSH高値となります。
反対に甲状腺機能亢進症の場合は甲状腺が働きすぎて甲状腺ホルモンが血中にあふれている為、上司である下垂体は(下垂体が正常であれば)TSHの分泌を押さえ、甲状腺を休ませようとします。すなわち甲状腺ホルモン高値・TSH低値となります。
この様に下垂体は甲状腺という車に対し、スピードが遅い時はアクセルをふかしたり、スピードが出過ぎている時はブレーキをかけたりしているわけです。
かつてはfreeT3とfreeT4の検査が無かった為、全体のT3やT4を測っていましたが、ホルモンの活性(遊離型)を見るには結合蛋白を考慮しなくてはならず、おまけにこの結合蛋白は種々の条件(妊娠など)で値が変化する為、甲状腺機能を把握するのはとても面倒で大変でした。しかし現在は直接 freeT3とfreeT4を測定できるので、T3やT4の測定はほとんど行われなくなってきています。
あなたの様に甲状腺ホルモン正常(T3やT4でなく、freeT3やfreeT4で測定してほしかったですが)・TSH軽度高値の場合は、潜在的機能低下症と考え、治療(甲状腺ホルモンの補充)は通常行いません。
ただし慢性甲状腺炎と言われたのでしたら、今後”潜在的”ではなく”臨床的な”(治療が必要な)機能低下症になる可能性はあります。(稀ですが、一時期機能亢進症になる事もあります。)
もしまた検査をされる事がありましたら、抗マイクロゾーム抗体(抗TPO抗体でもほぼ同じ)と抗サイログロブリン抗体を測ってもらうと良いと思います。両者とも陽性ならば、橋本病(慢性甲状腺炎)の可能性が高まります。またその時は,前述のfreeT3やfreeT4(検査代が結構高いのでfreeT4 のみでも可)もTSHと同時に測定してもらって下さい。もし甲状腺のエコー検査が可能でしたら、それも有用な検査です。
あなたの症状ですが、疲れやすい事、体重増加は甲状腺機能低下症の症状かもしれませんが(甲状腺機能低下症の体重増加は、脂肪が増える、いわゆる肥満とは違いますが)、生理も順調とのことですので、今回のデータのみでは治療を要するほどホルモンバランスが乱れているとは思えません。空咳やイライラは他の原因を考えるべきでしょう。
なお現時点で日常生活上の注意は特にありませんが、もし橋本病(慢性甲状腺炎)がはっきりしたなら、機能低下症の予防に海草類(ワカメ、コンブ、海苔など)を制限すべきでしょう。 -
甲状腺機能亢進症と高血圧との関係はありますか?
甲状腺ホルモンは交感神経の作用を高めますが、交感神経系の循環器に対する作用は、大きく2つに分けられます。
一つはα作用と言って末梢の血管を収縮させるものです。
α作用により血管抵抗は上昇し、血圧は上の値(ポンプである心臓が収縮して全身に血液を送り出す時の値なので、収縮期血圧と呼びます)も、下の値(心室が広がり、心房からの血液で充満する時期で、拡張期血圧と呼びます)も上昇します。
もう一つはβ作用と言って、さらにβ1作用とβ2作用に分けられます。 β1作用は心拍数を高めたり(陽性変時作用)、心臓の収縮力を高めたり(陽性変力作用)します。心臓を動かす微弱電流の刺激に対しても敏感になり(陽性の変伝導作用)、不整脈も起こりやすくなります。β2作用はα作用の反対で、末梢血管を広げる働きがあります。
甲状腺ホルモンは主としてβ1作用を高めますので、甲状腺機能亢進症では心臓の収縮力が増し(重症例や心房細動合併例を除く)、上の血圧(収縮期血圧)は上昇します。しかしα作用はあまり増強しません(あるいは増強してもβ2作用と拮抗?)から、末梢血管の抵抗は増加しません。
したがって甲状腺機能亢進症の患者さんの血圧は、上は高くても、下の血圧(拡張期血圧)は通常正常です。
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甲状腺機能亢進症と診断され、現在メルカゾールを1日6錠服用しています。現在は薬を飲みながらトラックのドライバーをしていますが、つい先日知り合いの甲状腺疾患の方が28歳という若さで、入院して2日後に亡くなりました。甲状腺の病気で亡くなった事以外詳細はわからないものの、自分の身に置き換えて考えたら怖くなってしまいました。甲状腺の病気が死に繋がる事は考えられるのですか?もしそうだとしたら、どんな事が考えられるのでしょうか?
お知り合いの方が甲状腺の御病気で死亡されたと言う事ですが(その方には大変お気の毒様です)、重症例では、甲状腺機能亢進症も甲状腺機能低下症も、どちらも命にかかわります。
甲状腺機能亢進症の場合はクリーゼ(英語のcrisis)と言って、ものすごい頻脈・高熱・精神不穏・ショック状態となり、放置すれば危険な状態です。クリ−ゼは甲状腺機能亢進症のコントロールが不良な時に、外科手術や怪我、感染症などのストレスが加わった時起こりやすい状態です。
甲状腺機能低下症の重症例は粘液水腫と言って全身がむくみ、胸水・腹水・心のう液(心臓の周りに水が溜まる)などを伴います。極度の低体温、徐脈、便秘となり、昏睡状態からやはり死に至りますが、死亡される方のほとんどは無治療の高齢者の場合です。
他の原因として考えられるのは甲状腺癌や、甲状腺以外のホルモン臓器(脳下垂体、副腎など)にも異常がある場合、甲状腺機能亢進症で不整脈(心房細動)があり、その為に出来た血栓が心臓から何処か(脳など)に飛んで詰まってしまった場合などです。
あなたは現在きちんと治療を開始されていらっしゃるのですから、上記の様な心配はまず無いでしょう。ただメルカゾールを1日6錠お飲みになっている様ですので、機能亢進の度合いは恐らく強い方なのだと思います。どうか内服を自己中止なさらないで下さい。
もし御心配でしたら、甲状腺腫瘍の有無(超音波検査)や、病気の活動性(TSH受容体抗体という甲状腺刺激物質や、サイログロブリンという甲状腺内の貯蔵物質を採血で測定します)を調べてもらってください。 -
甲状腺機能低下症で通院しています。私の従来の通院パターンは、まず血液検査のため採血をし、その約一週間後に再受診し検査結果を聞いて薬(チラージン)を処方してもらう、というのを三ヶ月〜半年ごとに行なっていたのですが、同じ病気でそちらに通院されている方も大体同じ診療内容でしょうか。違う点があるとすれば、どんなところでしょうか?
甲状腺疾患のお薬は1回で90日分の投与が可能です。
また機能亢進症のお薬に比べますとチラ−ジンの副作用は過剰でなければほとんどありませんので、機能低下症で安定した患者さんでしたら上記の様な治療が可能です。ただ診断がついた直後(投薬を開始した直後)の方や、検査の数値(ホルモンの値やコレステロール、LDHやCPKといった酵素の値など)が正常でない方は、検査の間隔は当然短くなる場合もあります。 -
私はバセドウ病と診断され3年間チウラジールを飲んでいました。しかし結婚して子供もほしいということで、先生に早く薬をやめたいと相談した所、1ヶ月薬を飲まないで様子を見て異常なかったら止めてもいいと言われて薬を止めました。もう通院もしなくていいと言われましたが、甲状腺の腫れがまだ残っています。もう一度検査に行ったほうがいいのでしょうか?早く薬をやめすぎたのか心配です。あと、子供もまだできません。これは関係あるのでしょうか?先生はこの薬は妊娠しても飲みつづけていいと言っていましたが、やっぱりいやなので・
チウラジールなどの抗甲状腺薬を飲んでいる間は甲状腺機能が正常でも、問題は中止した後もそれが保たれる(私達はこれを治癒とは言わず”緩解”と呼びます)かどうかです。
患者さんが数年間お薬を飲んで、緩解したかどうか(内服を中止できるかどうか)を知るには、甲状腺シンチという検査を行います。これは1週間のヨード(ヨウ素)制限食の後に放射性ヨードを投与し、甲状腺での取り込みを画像化したり、数値化したりするものです。取り込みの数値が高いほど甲状腺機能は亢進している事になります。この数値が一定値以下なら、お薬を止めてみましょうというわけです。
ただこの検査は大きな病院での予約検査であること(当院では関東中央病院に検査をお願いしています)、また被爆の問題(実際には妊婦でなければ問題にならない量ですが)などがあり、すべての患者さんにこの検査をお勧めしているわけでは有りません。
その場合は、”薬を止めてみてどうなるか様子を見よう”、という現実的選択も確かに有りです。ただ血液検査でホルモンの値のみでなく、病気自体の活動性(TSH受容体抗体やサイログロブリンの値)も正常化している事が条件です。もちろん内服中止後もこれらの値を定期的にフォローアップする必要がありますが、落ち着いていれば検査の間隔をだんだん空けていくのです。(1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、1年後と言った風に)
また、お薬を飲んでいても甲状腺機能が正常であれば妊娠は可能です。抗甲状腺剤には2種類(PTU:プロパジール、チウラジールとMMI:メルカゾール)ありどちらも胎盤通過性がありますが、産後授乳される場合は乳汁移行性の少ないPTUのほうが良く使われます。しかしMMIの方も、妊婦に使用してこれまで実際に問題が生じたと言う報告はありません。重要な事は、甲状腺機能を十分コントロールせずに妊娠されると、逆に胎児奇形や早流産、妊娠中毒症の可能性が高まると言う事です。また胎盤を通過したTSH受容体抗体(甲状腺刺激物質)が、子供にも甲状腺機能亢進症を起こす事があります。もしあなたの病気が緩解に至っていないのでしたら、むしろお薬を飲みながら妊娠を継続すべきでしょう。
以上をまとめますと、まずとにかく一度、検査を(上記血液検査だけでも)受けてみてください。
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甲状腺機能低下症と診断され、チラージンS錠50を一日二回飲むように指示を受けています。実は私の母親も同じ病気で、同じ薬を同じ量服用しているのですが、最近になって骨が弱くなり、その原因が一日二回のチラージンであるようだということを外科で言われたらしいのです。私は現在31歳ですが、この年令からチラージン一日2錠を続けていって、将来的に骨に影響は無いでしょうか。私の担当の先生は「若い男性ならばその心配は無い」とおっしゃているのですが・・・たとえば2錠飲む日と1錠だけ飲む日を分けるなどの工夫をした方がいいでしょうか?
お答えします。骨は硬いので一見代謝していないように見えますが、やはり皮膚のように古いものと新しいものとが絶えず入れ替わっています。古い骨は破骨細胞という細胞によって壊され、骨から血中にカルシウムが溶け出します(骨吸収と呼びます)。一方骨芽細胞というものを中心に新しい骨も造られ、この時血中のカルシウムは骨に摂りこまれます(骨形成と言います)。
骨吸収と骨形成のスピードが同じなら骨量は一定に保たれますが、このバランスが崩れて骨形成が骨吸収に追い着かないと骨粗しょう症になります。骨粗しょう症は加齢も一つの原因ですが、閉経後の女性ホルモンの減少や、副腎皮質ホルモン(ステロイド)の過剰も一因となります。甲状腺ホルモンも過剰の場合、高回転型の(代謝速度が速いため、結果として骨形成が骨吸収に追い着かない)骨粗しょう症となる事が知られています。
ただし、ここから先が重要です。甲状腺機能低下症の治療というのは、普通であれば甲状腺によって作られるはずの生命維持に不可欠な甲状腺ホルモンが、何らかの原因(橋本病など)で作れなくなってしまった為、その不足分を補っているに過ぎないのです。
元々が体内にあるはずのホルモンですから、骨粗しょう症などの副作用はホルモン過剰状態でなければ心配する必要はありません。TSHやfreeT4値が正常範囲になるようにチラ−ジンの維持量を定めますので、同じ病気でも機能低下症の程度が軽く一日1/2錠で済む人もいれば、一日に3錠必要な人もいます。と言うわけで、他人と比べてもあまり意味がありません。
お母様の場合はチラージン2錠をお飲みになっている時TSHが低くfreeT4が高かったのでしたら甲状腺ホルモン過剰と言えたでしょうが、実際の所数値を見ないと本当に過剰だったのか何とも言えません。チラ−ジンをたとえ飲んでいなくても骨粗しょう症の方はたくさんいらっしゃいます。
結論的には、あなたの場合勝手に内服を変えずに(甲状腺機能を客観的に評価出来なくなりますので)、3ヶ月に一回位は検査をされて、ホルモン補充量を必要最小限にされたら宜しいかと思います。